医療的ケア児の次男は5歳になるまで地域に居場所がありませんでした。
当時、動ける医療的ケア児は行政の制度上「障害児」にも「健常児」にも該当しないとのことで、通園ができる場所がなかったんです。
そこで、医療的ケアが必要な子どもへの支援を求め、市議会の議員に相談しながら請願を行った結果、医療的ケア児に保育園通園の道が開けたという経験があります。
この経験を通じて感じたのは、当事者が正当なやり方で声を上げることで、動かなかった制度に変化が起こる可能性があるということ。
ですが、正直なところ、その一歩を踏み出すのは簡単ではありません。
現在も病気を持つ子どもたちへの支援は十分とは言えず、親が制度の壁に直面して悩むことも多くあります。
この記事では、私が議員に相談した時の経験を交えながら、難病児の親が議員に相談することのメリットと具体的な進め方についてご紹介します。
あなたの声が支援の輪を広げ、壁となっていた制度を改善する力になるかもしれません。
ぜひ一緒にその可能性を考えてみましょう。
なぜ議員に相談するのか?
難病や障害を持つ子どもたちが支援を必要とするとき、通常は行政の相談窓口などに相談に行くと思います。でも、現存の制度のなかに必要な支援が組み込まれていない場合、「非該当」となり、いかなる支援を受けることもできなくなります。
言うなれば「0か100かの世界」であって、個々の事情は考慮されることはほとんどありません。
そこで、次に打てる手段として「議員への相談」が上がるわけですが、その理由には議員の役割が大きく関係しています。
現場の声を政策に反映させるパイプとしての役割
議員は、地域の現状に基づいた提言力を持っているため、当時者の声を受けて制度の改善や新しい制度の導入を促すことができます。
たとえば、日々の生活の中で実際に直面している困りごと、制度のすき間で支援からこぼれている、などといった現実的な問題は、当事者の視点から議員に伝えられることで、改善される可能性があります。
また、こうした支援の改善は、個々の家庭だけでなく、後に続く人たちにも恩恵が広がることにもつながるでしょう。親の声が議員を通じて届くことで、制度がより現実的な支援として役立つようになるのです。
難病児の親が議員へ相談する3つのメリット
メリット1:具体的な支援要望が届きやすい
難病を持つ子やその親の要望は、ご家庭ごとに異なると思います。
難病そのものにバリエーションが多く、障害像もさまざまであるため、既存の制度の枠ではカバーされない(もしくは制度そのものがない)ことがほとんどです。
ですが、議員に相談することで、親の声が行政の担当者にダイレクトに届きますので、支援の拡充や改善の可能性が高まります。
実際の生活で直面する細かいニーズを具体的に伝えることで、要望が共有され、より現実的な支援が実現する可能性が広がります。議員を通じて自分以外の地域の声を集めてもらうことで、行政により届きやすくなるのがメリットです。
メリット2:制度の柔軟な変更や新しいサポートの可能性
現在の制度に適応しづらい難病児の家庭にとっては、既存の支援が限られていることが課題です。しかし、議員に相談することで、その制度がどのように柔軟に運用されるべきかを検討してもらうきっかけになります。
例えば、「制度はあるが難病児には対象外になっている」「利用できる制度がない」といった問題に対して、議員を通じて新たなサポートを提案することで、対象範囲の拡大や利用条件の緩和が実現するかもしれません。制度を見直す動きや、他都市での先進的な取り組みを参考にした支援の導入が進む場合もあるので、当事者の声は非常に重要です。
メリット3:相談を通じた同じ境遇の親とのつながり・共有の機会
議員に相談する場で同じように悩みを抱える親と出会えることも、大きなメリットの一つです。相談を通じて、「自分だけが困っているのではない」と感じられたり、他の親の支援の工夫や経験談を知ることができます。また、相談の内容が広がっていくと、それを聞いた他の家庭も賛同や協力を申し出てくれることもあります。こうしてつながりを作ることで、同じように難病児を育てる親たちが連携し、議員とともに支援体制の改善に向けた動きを起こすことができます。
議員に相談することで制度を変えた体験談
私の初めての相談は、地域の議員が定期的に開催していた市政相談会。
動ける「医療的ケア児」という、比較的最近認知され始めた子どもの、地域での居場所がないことに焦燥感を感じたのがきっかけです。
現状を率直に伝えるところから始まり、どのように現行制度を改善してほしいのかという要望を含め、相談概要を手渡しました。
それがきっかけとなり、複数の議員を交えた担当部署との意見交換会や、同じ悩みを持つ仲間との交流会などを通して、具体的な要望内容を固めることができました。
次のステップとして、署名を集めて請願活動を行うことで、市全体の課題としてこの問題を強く働きかけることにしました。請願自体は反対政党が1つあったため通らなかったのですが、国としてのムーブメントもあって、2年後に医療的ケア児の保育所受け入れが実現し、初年度に6名の医療的ケア児が保育所に入所しました。
この経験を通して、親の声が制度改善に影響を与え、実際の支援体制を強化する力になると実感しました。議員に相談することで、親としての現実的な視点が地域社会の支援に活かされ、同じような悩みを抱える仲間たちも恩恵を受けられる結果につながるのです。
まずは相談! 小さな一歩が変化を生む
議員への相談と聞くと、「本当に相談していいのだろうか」「自分の悩みが行政を動かせるのか」といった不安が頭をよぎるかもしれません。しかし、実際には多くの制度改善や支援策が、当事者からの声や提案をきっかけに生まれています。難病児を育てる親として抱えている日々の悩みや支援の必要性を議員に伝えることは、決して小さな一歩ではありません。むしろ、その一歩が同じ境遇の家庭にとっても未来を変える可能性を秘めています。
例えば、「支援の対象外となってしまっている」「福祉用具が必要だが条件が厳しく取得できない」といった具体的な悩みを相談することで、今後の制度改善に反映されることもあります。また、初めての相談であっても、議員は多くの市民の要望を聞いていますから、悩みを共有することで的確なアドバイスや今後の手順についてのアドバイスが得られるでしょう。
この「相談してみる」という一歩が、未来の支援体制を形作り、実際に制度の柔軟な運用や新しいサポート策の誕生につながるかもしれません。まずは気軽に相談会や問い合わせを通じて、自分の声を届けてみることが大切です。自分の家庭だけでなく、同じような悩みを抱える家庭の支援にもつながると思えば、勇気を持って行動する価値があるはずです。
まとめ
親が議員に相談することは、支援の向上にとって重要な手段であり、必要な制度を変えるきっかけになり得ます。日々の悩みや困難をただ抱え込むのではなく、実際に声を上げることで、地域の支援体制が改善される可能性が広がります。私自身の経験を通して、議員への相談がどれほど大きな効果をもたらすか、そしてそれが制度変更や新しいサポートの誕生につながるかを実感しました。
このように「声を上げる」ことには、ただの提案以上の価値があります。小さな一歩を踏み出すことで、同じ境遇で困難に直面している他の親たちにも支援が行き渡るきっかけを作ることができるのです。
困難に立ち向かっている皆さんが、それぞれの声を通じて支援の輪を広げ、今後もさらなる改善を目指していけるよう、心からエールを送ります。